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Home > INITIA Archives > 経営学講座 > 1. 組織論:第6章「人間関係論」
経営学講座 〜理論から実践まで〜


1. 組織論
第6章「人間関係論」

 1. ホーソン工場実験と人間関係論

 1927年から1932年にかけて、アメリカ最大の通信機メーカーであるウエスタン・エレクトリック社のホーソン工場で、従業員の生産性に影響を与える要因はいったい何かについての大がかりな実験が行なわれました。この実験は、古典的管理論で主張されている内容を実証することを目的としていました。たとえば作業をする部屋の照明の明るさや温度など、物理的な作業条件の変化が労働者の生産能率・生産性を規定するという仮説を実証しようとしたわけです。実験結果はそのような仮説を支持するものではなく、従業員の仕事に対する意欲や集団規範など、物理的な作業条件以外の要因、人間関係に関する要因が生産性に大きく影響を与えているという結果が得られたのです。

 ホーソン工場の最初の実験は照明実験でした。実験を開始する前には、照明が明るくなればそれだけ生産があがるだろうと想定されていました。そこで2つの組みたてグループが編成されました。一つはテストグループとして、照明度をいろいろ変化させた中で作業を行うグループ、そしてもう一つはコントロールグループとして照明度を変化させない状況で作業をさせるグループです。テストグループでは照明度が明るくなるにつれて、生産性が上昇していきました。しかし一定の照明度のもとで作業をしていたコントロールグループにおいても生産性の向上が見られたのです。

 この驚くべき結果に直面した実験メンバーは、ホーソン工場での実験をさらに拡大しました。照明実験では、単に技術的、物理的な条件の変化だけではなく、人間の内面にまで踏み込んだ分析が必要と考えられたので、エルトン・メイヨーという行動科学の専門家の協力を仰ぐことになりました。そこで電話用継電器組み立ての流れ作業に従事する女性の工員を何名か選び、ある部屋の中で、作業のやり方、部屋の温度、睡眠時間、休憩時間のある/なし、休憩時間においてスナック菓子を出す/出さない、作業時間の長さなど様々な作業の条件を変更しながら26ヶ月にわたって実験が行われました。突然、すべての条件を実験前の状態に戻して見ることも行われました。このような場合、一般的には突然の環境変化という心理的な衝撃が加えられるので、工員の生産性は低くなると予想されたのですが、結果は最高の生産性を示すことになりました。

 このように実験結果は驚くべきもので、週を重ねるごとに選ばれたグループの生産高(1日当たり、および週当たりの生産高)は右肩上がりになったわけです。つまり作業条件をどのように変更したとしても、無関係に生産高は上昇していったわけです。

 ではなぜ作業部屋の条件を変えても生産性は影響を受けなかったのでしょうか。それは女性工員が「多数の従業員の中から選ばれて実験に参加しているのだから、がんばらなければ」という感覚を持ったからでした。彼女たちが持っていた「選ばれている」という感覚が生産性に大きな影響を与えたわけです。

 また集団で作業を行っていることによるプレッシャーなども作用したといわれています。女性の工員はもともと物理的には他の工員といっしょに働いていたものの、本来は個々ばらばらの存在でした。しかし多くの工員の中から選ばれたことによって、いまや一人一人が信頼と協力で結ばれた作業集団の一員という意識を個々のメンバーが持つようになっていました。これが一体感や達成感をもたらし、そのような満足感がさらに生産性を高めるように作用したわけです。

 これは人間の感情を排除している機械的人間観にもとづいた科学的管理法ではまったく発想されなかったことです。ホーソン工場実験が行われることによって、人間の心理的側面、内面的側面の重要性が組織論において初めて指摘されることになり、機械的人間観に基づかない新たな経営理論、管理論を構築する必要性が高くなったのです。こうして出てくるのが人間関係論です。つまり人間の心理的側面、内面的な側面を重要視した新たな組織理論/管理論です。

 もう一度ホーソン工場実験の結果を整理しておきましょう。

(1)物理的作業条件と作業能率との間には、従業員の感情や意欲といった主観的な態度があり、これが大きく影響している。
(2)この主観的な態度は、自然発生的に生じる非公式な人間関係、いわゆる非公式集団(インフォーマル・グループ)の集団規範の影響を大きく受ける。
(3)この集団規範が企業の組織目標をサポートするのであれば、生産性の向上につながる。
(4)非公式集団内の人間関係の良し悪しや集団規範の内容は、管理者の管理行動の良し悪しに大いに依存している。

 実験途中で参加メンバーが変わるなど、実験の行いかたに関して若干の批判はあるものの、ホーソン工場実験の結果、科学的管理法が主張している当初の仮説は統計的に支持されないことになりました。

 2. グループ・ダイナミクス

 ホーソン工場実験では集団が個人の生産性に影響を与えていることがわかりました。この実験結果は経営学に隣接する学問分野で注目を集めました。そのひとつは集団に関する研究、そして集団を研究した人間関係論の考え方を用いたリーダーシップの研究です。ここでは集団の研究に関してみていくことにしましょう。

 組織論では、個人が集団を構成したときに共通に認知された集団という「場」が、各組織メンバーにどのような力を及ぼすのか、そしてその力はどのような条件に左右されるのかという問題が研究されています。この研究をグループ・ダイナミクスと言います。グループ・ダイナミクスは集団の動きを集団凝集性、集団圧力、集団目標、リーダーシップの概念から分析しました。そして集団において受け入れられ、メンバーとして認められた時に、集団のメンバーは集団に強い魅力を感じることがわかりました。集団の魅力とは集団凝集性という言葉で表現されるもので、「個人がその集団にとどまりたいと思うその強さ」です。つまり集団凝集性が集団圧力、集団目標、リーダーシップ現象の源泉、つまり集団運動の中心的概念であることをグループ・ダイナミクスは明らかにしたわけです。

 3. リカート組織論

 グループ・ダイナミクスの集団研究の結果を用いながら、リーダーシップの研究との融合を試み、体系的・実践的なモデルを構築したのがリカートです。

 リカートが主張する管理の方法は基本的には3つの原則に基づいています。第一は支持的関係の原則です。この原則は、管理者は部下に対して真の関心を示すこと、集団内の各構成員が上司や仲間から支持され、人間としての重要性や価値が認められ、自己の能力が十分発揮されていると信じるような相互作用を作り上げることが求められていること、です。グループ・ダイナミクスの研究では、構成員が集団において受け入れられ、価値が認められると、集団に強い魅力を感じ、集団の凝集性が高くなるという結果が報告されています。支持的関係の原則は凝集性の高い集団を作り上げるための原則なのです。「目をかけてくれているな」と感じたら、人間誰しも悪い気持ちにはならないのと同じことです。

 第二の原則は、組織を形成するうえで、個人ではなく小集団を一つの単位として、集団的意思決定を行う原則です。こうすることによって集団の構成員が意思決定に参加することが可能になります。グループ・ダイナミクスの研究では、集団目標に参加することは、構成員の動機を促進すると結論づけられています。重要なことは「組織のビルディングブロック(構成単位)は個人ではなく集団」ということです。小集団の集積が組織を成立させると考えることがリカート理論の基本で、組織活動の中心は集団管理にあると捉えるのです。日本企業で行われている自主的な小集団活動が企業の生産性にプラスの影響を及ぼしておりと言われますが、集団の構成員が意思決定に参加することがいい結果をもたらすことの一つの事例として考えられます。

 第三は高い目標の原則です。従来の人間関係論は作業者に対して関心を示すべきであるという受け身的な主張でした。しかしリカートは、高い目標を掲げることによって人間の自己実現欲を満たし、その結果、生産性が向上すると主張しました。

 4. 高業績チームの管理スタイル

 またリカートは多くの組織を分析した結果、一般に行われている管理のスタイルが、大きく4つに分類することができ、一本の数直線上に位置付けられることを発見しました。4つの管理スタイルはシステム1からシステム4と呼ばれ、以下のような内容です。

〈システム1〉
 管理者は部下を信頼していない。部下をいかなる意思決定にもほとんど参画させることはなく、たいていの意思決定や組織目標の決定はトップが行い、命令系統を通ってこれが下におろされる。部下は恐れと脅し、恣意的な懲罰と報償に基づいて働かされ、生理的・安定欲求レベルの充足がかろうじて得られている。統制機能はほとんどトップに集約されており、公式の組織目標に反抗する非公式組織が発生しやすい。

〈システム2〉
 管理者は部下に対し、ちょうど主人が召使に対するように、信用はするが恩着せがましさを隠そうとしない。たいていの意思決定や組織目標の設定はトップで行われるが、あらかじめ定めた一定の範囲内でかなりの決定が下位レベルで行われる。動機付けには報償と懲罰を与えること、もしくは罰をほのめかすことが用いられる。統制機能は依然としてトップに集中しているが、中間及び下位レベルにもある程度の権限委譲が行われれている。非公式組織の発生は普通であるが、必ずしも公式組織の目標に反抗するものではない。 �

〈システム3〉
 管理者は部下に対し、全面的ではないまでも相当程度の信頼を寄せている。基本の方針や全般的な決定はトップで行われるが、低位レベルの個別の問題に関する決定は部下にも認められている。組織の上から下へ、下から上への両面コミュニケーションが行われる。動機付けには報償と時により懲罰、そしてある程度の参画とが用いられる。統制機能のかなりの部分が、責任の共有意識を持って下位に委譲されている。非公式組織が発生することもあり、公式組織の目標に協調することもあれば部分的に反抗することもある。

〈システム4〉
 管理者は部下を全面的に信頼し信用している。意思決定は広く組織全体で行われているが、バラバラにはならずうまく統合されている。コミュニケーションは、上下方向のみならず、同僚間でも行われる。構成員は、報償制度の策定、目標設定、仕事の改善、目標達成課程の評価にも参画が許され、関与させられており、これによって動機付けられる。統制機能については、低位の職場単位まで完全に責任を分掌している。公式組織と非公式組織が一致してしまうことも珍しくなく、すべての勢力が設定された組織目標の達成に向けられる。

ハーシ=ブランチャード『入門から応用へ 行動化学の展開 人的資源の活用』生産性出版1978年より

 これらの概念的な管理システムを評価できる技法を開発したリカートは、多数の管理者に最も生産的/非生産的な部署はシステム1からシステム4までのどこに位置するかを聞いてみました。すると、高い生産性を達成している部署はシステム4に近いという結果が出てきました。つまりシステム4のようなチームワークと相互の信用・信頼に基礎をおく管理スタイルが取られているチームは生産性が高くなるのです。

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