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Home > INITIA Archives > 経営学講座 > 1. 組織論:第3章「現代の組織理論」
経営学講座 〜理論から実践まで〜


1. 組織論
第3章「現代の組織理論」

 1. イントロダクション

 代表的な組織理論は1940年頃までの流れでした。今回は1960年代以降の代表的な組織理論を見てみましょう。大きな違いは、企業の置かれている環境が大きく変化するようになったことです。技術、消費者の嗜好、政治的・社会的な変化などが企業に大きな影響を及ぼし、環境の変化に適応した経営を行う必要が出てきたわけです。それに伴い組織構造のあり方も変化していったわけです。

 2. コンティンジェンシー理論

 皆さんが働いている企業は、自由闊達にものを言える組織ですか。それとも恐怖政治とまでは行かなくても、戦時中の日本のように、なかなか自由に発言できず、トップがすべてのことを決めてしまうような組織ですか。多くの人にとっては後者のような組織はあまり望ましいものではないと考えるでしょう。やはり自由にものが言える方がいい。和気あいあいとした組織のほうがいいと考えるのが一般的でしょう。しかし軍隊の組織はなぜそのような和気あいあいとした雰囲気ではなく、むしろ体育会系の厳しい組織形態を取っているのでしょうか。もしすべての人間にとって、自由に発言したり、自分で意思決定ができたり、上下関係がなく仲間的な雰囲気を持った組織がいいというのであれば、世の中に存在するすべての組織がそのようになってもいいはずです。しかし現実にはそうなっていない。なぜでしょう。

 この疑問を解く鍵は、「時と場合による」という日本語にあります。英語にも“case by case”という同じような表現がありますね。そしてコンティンジェンシー理論とはまさにこのような表現を主張する組織理論です。

 コンティンジェンシー理論が展開される以前は、「ベストな組織とはどのような組織か?」という問題意識で組織の研究が行われてきました。やはり人間の意識としてはよりいいものを求めるものですから、組織としても今よりももっといい組織構造があるはずだ、という意識で研究が行われたり、企業の現場で工夫が行われてきたのです。

 しかし「ベストな組織は状況しだいで異なる」ということが定量的に実証されるような研究が1960年代に行われました。たとえば変化の激しい環境に置かれている企業と、あまり変化がない環境で事業を行っている企業とでは最適な組織は異なってくるのです。これがコンティンジェンシー理論と呼ばれるものです。「コンティンジェンシー(contingency)」という言葉は「条件付けられた」という意味です。つまり最適な組織構造は、企業が直面している環境によって「条件付けられている」「決められている」ということです。

 なぜ置かれている環境によって最適な組織構造が異なるのか、という疑問に答えたのは近代組織論のところにも出てきたサイモンです。ちょっと難しい言葉になりますが、彼は組織を「情報処理のメカニズム」と捉え、環境が異なると処理するべき情報量も異なってくるから当然最適な組織構造も違ってくる、と考えたわけです。人間も同じです。あまり暑いところと寒いところでは必然的に着る服は異なってきます。また休みのときとテストのときでは頭脳への負荷は全く異なります。休みのときと比較すると、テストのときには問題を解くために動員される知識や能力は飛躍的に多いでしょう。難しい問題に直面するとなおさらです。

 3. 組織進化論

 よく「組織には異端児が必要だ」と言われます。なぜでしょうか。この疑問に答えてくれる一つの理論が組織進化論です。

 1970年代後半から80年代に入ると、技術革新、企業間競争、消費者の嗜好の変化など企業を取り巻く環境の変化は非常に激しいものになりました。そのような中で企業が存続していくためには、安定成長期のように、ただがんばるだけの経営や、環境に対して受動的な存在にとどまるのではなく、より主体性を持って環境に対して積極的に働きかけていく企業経営が求められるようになりました。これらのことは1970年代後半からミンツバーグなどの「ネオ・コンティンジェンシー・セオリスト」と呼ばれる研究者たちによって、コンティンジェンシー理論に対する批判として行われるようになったものです。彼らの主張は「組織は単に受動的に環境に適応するのではなく、戦略の策定や遂行を行うことで主体的に環境に適応している」とか、「組織の有効性はコンティンジェンシー理論の言うように組織特性に鍵があるのではなく、組織を構成する要素間に適合性があれば、有効性は発揮される」というものでした。

 いずれにしても環境の変化が激しく、また多様性にも富んでいる状況のもとで、企業が継続して存在していくためには、組織は絶えず進化していかなければならなくなったのです。生物学の進化論の考え方を組織に援用したものが、「組織進化論」とか「組織の自己組織化(セルフ・オーガナイジング)」「組織の自己革新」と呼ばれる分野です。ここでいう進化とは新しい情報を獲得し、創造し、新しい思考様式を形成するということです。セルフ・オーガナイジングとは、混沌の中から新しい秩序を創り出すということです。組織進化論の代表的な研究者はカール・ワイクと言う人です。

 進化論と言うのは、主がなぜ進化するかという非常に単純で、しかし非常に重要な問題に対して応える理論モデルです。簡単に言うと、生態環境が変化することによって、主に何らかの突然変異が起こる。その突然変異種間で生き残りの競争が起こる事によって種が選択淘汰されていく。そして淘汰されて後に残った種が生態環境の中で保持されて環境の中の主要な存在となるという流れです。上述したように、組織進化論は、情報創造を鍵としており、いわゆる進化論のような「変異→淘汰→保持」というダーウィニアン経ちの考え方を単純に当てはめたわけではありません。ただ、ためには、組織の中で変異が発生し、組織全体が揺り動かされる事によって、組織全体が変革していく、組織が継続して進化していくと考えると、進化論のプロセスが有効であることがわかるでしょう。組織の中に異端が必要だとよく言われますが、それは組織進化論によるものです。異端が存在する事によって組織に変異が発生し、継続的に進化していくためのきっかけとなるからこそ、必要とされるわけです。

 4. 組織における知識創造

 最近の企業の動向を見ますと、競争力の構築という観点からは、生産よりも研究開発に資源がシフトしているように思われます。これは言いかえると「(生産の)効率性」から「製品開発」「プロダクト・イノベーション」に思考がシフトしたと言えるでしょう。もちろん生産の効率性をより達成するためには何らかのイノベーションが起こらなければならないわけですが、以下に生産を効率良くするかというコスト重視の思考ではなく、いかに市場に受け入れられる製品を開発するかが競争の焦点になりつつあります。

 このような競争ポイントのシフトによって、現在の企業では、組織のもつ「知識」という経営資源が最も重要になっています。この知識をいかに生み出していくのか、これが現代の組織論の最も重要な研究テーマの一つです。言いかえると、コンティンジェンシー理論のように情報の処理ではなく「知識の創造」が重要なのであり、そのプロセスをいかに構築していくのかが競争戦略上重要になっているわけです。

 知識創造理論を理解するにあたっては知識の種類と知識の変換プロセスが鍵となります。知識には「形式知」と「暗黙知」があります。形式知とは言葉に表される知識です。たほう暗黙知とは言葉には言い表せないような知識です。たとえば日本人の会話の中で

「あれってなんていったかなぁ。あれだよ、あれ。」

「ああ、あれね。わかった、わかった。」

 という会話が交わされることがあると思いますが、この「あれ」にあたるものが「暗黙知」といわれるものです。つまり言葉には言い表せないのですが、会話をしている双方に同じイメージのものが浮かび上がっていて、会話をしている、つまり知識の交換が行われている、ということです。もしくは熟練工が持っているノウハウも暗黙知。熟練工と言わず、たとえば、昔は良くありましたが、テレビの映りが悪いときには、ある一定の角度である決まった場所を「バンッ」とたたくとテレビの映りがもとに戻ることがありました。この「どのような場所をどの角度でたたくか」という知識は経験からくるものであり、なかなか言葉では言い表せないものです。このようなノウハウや知識が暗黙知と言われるものです。

 この人の持っている暗黙知をいかにして形式知に変換し、組織全体に広めていくか、これが組織における知識創造のコアとなります。この知識の変換プロセスは4つからなると言われています。一つは暗黙知から暗黙知を作り出す「共同化」、第2に暗黙力系敷地に変換する表出化、形式知と形式知を結びつける「連結化」、そして最後に形式知を暗黙知に変換する「内面化」です。このような知識の変換の4つのモードを繰り返すことによって、組織の持つ知識が増幅する、個人の持っている暗黙知が集団や組織全体にまで増幅し、個人にフィードバックされることによって、個人レベル及び組織レベルで、保有している知識が増幅されていくと言われています。

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